一般社団法人一関青年会議所
2023年度理事長所信
第68代理事長 坂下 立志
【はじめに】
「JC は地元経営者の集まりだから中途半端な気持ちでやるならやめた方がいい。地元経営者でもないお前が、経営者に混ざって本気でやっていけるのか。」 2017年一関青年会議所入会前、知人から言われた言葉です。
一関出身ではなく、経営者でもない私は、本当にやっていけるのかという不安から一言も言い返せず黙り込んでしまったことをいまでも思い出します。
そんな思いを抱えながら、現在まで青年会議所という団体を通じて、多くの役職や事業にチャレンジする機会をいただき、様々な活動や運動を必死で実行していく中で青年会議所入会前とは比べものにならないほど自信が持てるようになりました。
いま振り返ってみると多くの先輩方、仲間たちは出身が一関であるのか、経営者であるのか、それを理由に付き合い方を変える人はおらず、私が共に活動してきた一関青年会議所は地域の課題解決に向き合う人は誰でも迎え入れてくれる温かくも成長できる場所でありました。
先輩方が永きに渡り紡いでこられた理事長のバトンを、68人目の走者として、多くの仲間と共に一年間全力で走り抜いてまいります。
【若者が定着し人が集まり賑わう地域へ】
一関市の人口は 1955 年をピークに減少局面に入っており、昨年も 1 年間で約 2000 人減 り、今もなお減少を続けています。2022 年3月末時点で11 万679人の人口が2045年には7万5000人を割り込むと想定されております。それにより生産年齢人口も減り続けており、 各産業では労働者不足や後継者不足、雇用環境の悪化などが懸念されております。
さらに人口減少は消費者の減少にもつながり、地域の商業施設や小売店を日常的に利用する商圏人口は縮小していくことが見込まれています。特にも、消費支出額が多い生産年齢 人口の減少は、経済に大きな影響を与えるとされています。
その原因の一つは、転入よりも転出数が多いことによる転出超過からくる社会減であり、転出者の年齢分布では16 歳から39 歳までの若者の転出が多くなっていることがわかります。
多くの若者は仕事をし、家庭を持ち、子育てをして生活していきます。
より多くの若者が残ってくれるような地域になれば、生産年齢人口減少に歯止めをかけることができると考えます。
本年度はひと・しごと・まちの3つの観点から若者の地域定着を促し、若者が定着し人が集まり賑わう地域を創造します。
【ひと 若者の活躍を推進し地域に残るきっかけをつくる】
進学を機に転出する若者がいることは、学校の少ない一関市において避けようのないことであり、若者に戻ってきたいと思ってもらうためには、仕事や収入の確保など経済面での安定はもちろんのこと、地域の利便性や娯楽施設などの環境面の充実、そして、
「一関いいね。一関おもしろい。一関をもっとよくしたい。一関でチャレンジしたい。」
という地域に対するポジティブな感情をもつことも大切だと考えます。
若者の中でも特に学生や子育て世代の人が生き生きとして、やりたいことができる環境をつくること、また、子供を産み育てやすいまちをつくることで地域に対するポジティブな感情を育みこの地域に残るきっかけをつくります。
【しごと 価値デザインの推進で輝く地域へ】
昨年当青年会議所は持続的で豊かな地域社会の実現への第一歩として、いま地域外に流 れている「ひと、もの、かね」を1%でも多く地域に残し続けるために地域内経済循環の推進をしてまいりました。多くの方々に賛同いただき、市内でも様々なところで経済循環の声が聞こえた一年でした。
人口が減少していく中で地域内経済循環を起こすためには、地域にお金を使いたくなる商品やサービスがあること、つまり地域の価値が重要であると言われており、2019 年から内閣府は知的財産推進計画2019と題して、脱平均×融合×共感の価値デザインという考え方を普及促進してきました。価値デザインとは、地域や地域の人材の持つ平均から外れた尖った潜在能力、地域内外の輝く才能が融合してできる新しいアイデア、そのアイデアが共感を得て価値となって実現することを言います。
ここ一関市にも他にはない突出した技術・商品や人材などが多く存在しています。いままでの価値はもとより若者の新たなアイデアをもって、様々な商品やサービス同士が融合し共感を生むことで、価値デザインの考え方が広まり、より高い地域の価値が生まれることで 若者が地域に関心を持ち、地域に残るきっかけをつくります。
【まち 新たな交流がつくり上げる夏まつりの新しい価値】
昨年3年ぶりに開催したいちのせき夏まつり二代目時の太鼓大巡行は、コロナ禍にも関わらず多くの市民が見学に訪れ、開催を心待ちにされていたことを再認識することができました。担い手の減少が叫ばれている地域文化である夏まつりを次代に残していくためには若者に地域文化に対して興味を持ち、地域に残す必要性をより感じてもらう必要があると考えます。本年度いちのせき夏まつりは70 回目の節目を迎えます。多くの関係者、関係団体との交流による連携により、二代目時の太鼓大巡行や地域文化の価値を多くの若者に感じるきっかけをつくってまいります。
一関のまちの歴史を知り、多くの人との交流の中で地域を思う気持ちをはぐくむこと、また直接夏まつりに参加せずとも地域文化の関係人口を増やすことで、友人知人の影響で興味が生まれる機会を提供します。
地域文化に価値を感じ、地域に残りたい若者を増やすきっかけとして、二代目時の太鼓大巡行を70周年にふさわしいものにしてまいります。
【まちを想う多くの仲間とともに】
我々青年会議所メンバーは、明るい豊かな社会の実現を目指しています。そして、日本青年会議所ではこの明るい豊かな社会を「輝く個性が調和し、社会の課題を解決することできる持続可能な地域」と現代に当てはめて定義されています。
つまり様々な職種、様々な人の個性が輝き、地域に数多くある課題を解決していくことで持続可能な地域をつくっていくために我々は活動しています。また、その課題を解決するのは青年会議所メンバーではなく、我々がつくり出す運動であります。
青年会議所は青年が運動を起こすための発展と成長の機会を提供する団体です。そして、運動を作り出すためには、運動を作り出す人の存在が不可欠であり、40 歳が卒業となるこの組織で卒業後に地域や社会により良い変化を起こすための運動を起こせる人財を育てることこそが青年会議所の価値であります。
では誰が運動を起こすための発展と成長の機会を得られるのか。
経営者はもちろん、会社員、公務員、フリーター、専業主婦(主夫)、学生。誰もが成長と発展の機会を得られる組織であるべきだと考えます。昨年、一関青年会議所では門戸を広げるために準会員や学生会員の制度を作りました。その制度を活用しつつ、まずは我々が数多くの仲間に発展と成長の機会を提供できる団体となり、職業や性別にとらわれず、まちを想う人同士がつながることのできる会員拡大、そして、メンバーの特徴や個性が輝く組織づくりを実践してまいります。
【結びに】
転勤を機に20代前半で一関に移住した私は、仕事を通じて地域の人と触れ合い感謝され、地域を想う青年会議所のメンバーと出会い、その活動の中でこのまちのことを知り、どんどん一関が好きになり、家族ができ、この町を永住の地と決めました。
青年会議所の運動の中で学生と大人がまちの課題解決について共に考える事業を行いました。その中で「できないと思っていたことが、今日地域の大人の方と話したら、全部できることになりました。世間ってすごい。」目を輝かせて話していた学生が構想していたことが本当に実現しました。
きっとこの学生は地域や地域の大人のことが好きになり、将来これが思い出になり、一関に定着するきっかけになってくれたと思います。
好きになることのきっかけは、知ること。
私もこの学生も地域を知ることが一関を好きになるきっかけになったと思います。人口減少、生産年齢人口減少が続く中で若者に故郷に残ってもらうために我々青年が考えるべきことは、若者が地域を知り活躍できる場をいかにつくるかではないかと考えます。
地域に住み暮らす、個性豊かな若者が活躍しきらびやかに輝きだせば、自然と注目され、若 者が定着し人が集まり賑わう地域となり、必ずや発展していきます。
We do first.
まずは我々が輝こう。
まずは我々が個性を尊重し、誰もが発展と成長の機会を得られる団体となろう。
お互いの強みを活かし、誰もが発展と成長の機会を手にすることができる団体を目指そう。
女性も男性も学生も社会人も様々な人が活躍できる団体になろう。
我々が作り上げた運動が若者に地域を知るきっかけを与え、多種多様な個性という彩りあふれた持続可能な一関を目指し、運動を推進してまいります。
1年間どうぞよろしくお願いいたします。
若者が住みたくなるまち一関の創造
・若者が活躍できる地域づくりの実践
・地域の未来を輝かせる価値デザインの実践、普及
・新たな交流がつくり上げる地域文化の継承、発展
・若者同士のつながりをつくる会員拡大の実践