一般社団法人一関青年会議所
2025年度理事長所信
第70代理事長 阿部 真岐
【はじめに】
私は一関から車で15分ほどの宮城県栗原市で育ちました。幼少期よく遊びにきていたここ一関市の駅前はデパート、ゲームセンター、カラオケなどの娯楽施設、多くの飲食店、そしておしゃれな雑貨屋、古着屋もあり、商店街は活気に溢れていました。幼い私には街を歩くお兄さんやお姉さんは、かっこよく、きれいで、キラキラしているように見え、「ここに住んだら私もこんなかっこいい大人になれるのだろうな」という憧れを抱いた事を今でも覚えています。19歳の時、結婚を機に当時憧れていた一関に住むこととなりましたが、知らない土地での新生活は不安でいっぱいでした。その後、無知な私は、育児においても、地域の人とのつながりが薄く、孤独すら感じるようになりました。不安と孤独を感じる当時の生活は想い描いていたキラキラしたものとはまったく違うものでした。
そんな中、転機が訪れたのは私が24歳の時、この一関青年会議所に出会いました。その中で様々な方と関わりを持たせていただいたのですが、ある時、青年会議所でお世話になっている先輩からこんな話しを聞きました。「息子がね、僕はママのお店の隣の土地を買ってそこでかき氷屋さんをやりたいって言ってるのよ。その為にお小遣いを半分貯金してるのよ」。当時先輩のお子さんは7歳位だったと思いますが、その話しを聞き、私はとても嬉しく思いました。先輩のお子さんがこの地域に夢を描いた事と私が幼少期に抱いたキラキラした一関への憧れへの思いがリンクしたように思えたのです。私が理事長という職をお預かりするにあたり、そのような思いを持つ子どもが多ければ今ある地域課題解決の一手となると感じたのです。
無知であった私がこのように考えられるようになったのは、この地域に育てていただいたからです。当時のような孤独さはなく、現在は一関に知人や、支えてくださる方、先輩や後輩、仲間ができたと共に地域の歴史や、文化、魅力など多くの物を知り、新たな気づきを得る事ができたからこそ今があるのだと実感しています。それは仕事の繋がりはもちろんですが、それだけではなく、地域との繋がり、地域の人との繋がりができたからです。そして知る事により成長と学びを得る事も出来ました。この感謝の気持ちを形にし、愛するこの地域がこれからも続くよう、そして未来を担う子ども達が夢を描ける地域であると思えるような地域をつくり、未来につなげていきます。
【子どもが夢を描ける地域へ】
一関市では、転出による理由から男性は18歳から19歳、女性は17歳から18歳の減少率が最も高くなっており、一方で20代の人口が最も少ないことから、進学や就職などの理由で他地域へ転出した後に地元へ戻る人が少ないということが考えられます。若者世代の転出が進み、将来労働力の中核として経済に活力を生み出す存在になる世代の人口減少によって、地域経済の衰退、担い手不足などの影響を及ぼします。
このような現況において、「子どもが夢を描ける地域」であることが必要です。私には18歳を迎えた息子がおります。息子に「学校を卒業したら一関に戻ってくるの?」と聞いたところ、「戻ってこないよ。戻ってきても何をすればいいかわからないし、都会の方がいい」と言われました。これが息子の今の本音なのかと、私はとてもショックを受けました。地方は、サービスや働き先の選択肢が少ないなどのデメリットがありますが、そればかりではありません。地元ならではの食や文化、慣れ親しんだ環境、家族や友人との関わり、地域活性に貢献するなど、地元に暮らしたり関わるメリットは多く存在します。このような今ある地域の魅力を子どもたちに知ってもらい、そして魅力や選択肢を増やしていくことが、子どもが夢を描ける地域を作ることであり、それが地域の活性化につながります。人が集い賑わう、活気のある地元で育った子どもたちが、この地域に夢を描くのです。今後、一関が「子どもが夢を描ける地域」になるよう運動を展開して参ります。
【地域経済の向上】
現在、一関市の少子高齢化や人口減少は極めて厳しい状況下にあり、このような一関の現況において、私は「関係人口」を増やすことが重要だと考えます。
関係人口とは、地域外からこの地域と継続的かつ多様に関わる人々のことです。地域に対し深い関わりを持つことで、スポットの消費に留まらず、地域づくりの担い手創出の一助となり、ひいては地域活性化や持続可能な地域をつくることに繋がります。
そのために私たちが出来るのは「地域の魅力を発信する」ということです。一関は岩手県の玄関口に位置し、各所へのアクセスも良好。県外・外国人観光客や出張での訪問客を誘致するにはとても良い立地です。また、地元の幸に恵まれ、銘菓も多いことから、食にも魅力があります。地域ならではの特産品や観光地、または特色を深く知り、そして、そこに住む人や働く人との関わりを持つことで関係人口の増加にアプローチすることが出来ます。今後、一関の魅力を多くの人に伝えることで、一関に集う人が増え、さらに一関と関わる人が増えていく事で地域経済の向上を図り、子どもが夢を描ける地域となるよう運動を展開して参ります。
【会員拡大と地域のリーダー育成】
地域をつくるのはあくまでも人です。人の成長が地域の成長に繋がり、それがより良い地域へと発展していきます。そのためには次世代のリーダー育成を行い、リーダーを一人でも多く増やすことが必要です。
リーダーを育成する場として、青年会議所の活動はとても適していると考えます。青年会議所では「個人の成長、地域との関わり、国際交流、ビジネスのチャンス」といった4つの機会を設けており、この機会を活かすよう積極的に参加することで、自己成長することが出来ます。しかし、この機会を活かすかどうかは自分次第。私も長年にわたり所属しておりますが、その機会を掴み切れず、成長することに足踏みをしてしまった経験があります。 私のような後悔をするメンバーを少しでも減らし、地域を担う次世代のリーダーを育成すべく、青年会議所活動への積極的な参加を促して参ります。
また、今ある地域課題の解決を進めていく上で次世代のリーダー候補を増やすことも必要です。そのために重要なのが、会員拡大に対して前向きに取り組める体制を作ることです。メンバー一人一人が青年会議所のことを深く理解し、魅力を体感する。そして、「この経験を人に共有したい」、「同じ活動をする仲間を増やしたい」という思いが、前向きかつ積極的な拡大活動につながるのです。今後、メンバーの誰もが青年会議所を語れる組織を作り、皆が拡大の意義や目的を持って拡大活動できるように取り組んで参ります。
【二代目時の太鼓大巡行による賑わいの創出】
日本ならではの文化「お祭り」は賑わいを創出し地域活性化に繋がります。
我々、一関青年会議所が主管し、毎年夏まつり2日目に行われる『二代目時の太鼓大巡行』は、1976年に「時の太鼓兄弟 揃い打ち巡行」から始まり、1983年に二代目時の太鼓を新調し、本年で42年という歴史を持つ地域の歴史深き文化となっております。これは一関の文化であり、毎年賑わいをもたらし、この独自の地域文化は一関にとっての強みでもあります。
しかし、年々、担い手の減少や、参加者、観覧者の数が減っており賑わいの希薄化が進行しつつあります。この地域の強みを後世に残していくには、担い手の増加はもちろんのこと、この地域独自の文化をより多く発信し、地域に興味や関心を抱く人を増やすことが重要となってきます。
また二代目時の太鼓をよりインパクトのある地域の強みとする為に新たな価値をデザインし、地域文化に興味、関心を持ってもらう人を増やし、機会をつくることにより多くの人へ伝播させ、交流人口を増やし地域の賑わいによる活性化を目指して参ります。
【70周年事業地域の未来をつくる青少年へ向けて】
一関青年会議所は長きにわたり、青少年育成に力を入れてきました。小・中・高生 と対象は違えども青少年育成はこの日本、地域を支える子どもたちにとって大事なことであります。 70周年を迎える青年会議所は今後も地域が明るく豊かであり続けていく上で、今ある、少子高齢化や人口減少、若者流出という課題に向き合い、減少傾向にある地域の子ども達にも、地元に住み暮らしたい、この街に残りたいなどと夢を描けると思えるような地域になる事が必要だと考えます。
成長期における地元での体験や経験は地域に対する愛着心を育てます。そういった体験、経験を通じて、この地域を好きになる子どもや、住み暮らしたいと思える子どもを増やしていきたいと考えます。この地域ならではの体験をすることで、子どもたちの地域に対する愛着心を醸成し、次代を担う子どもたちが、将来に夢を描き、地域に居ること、帰ってきたいと思うことで、より良い地域の未来をつくる運動を展開してまいります。
【感謝と未来へ】
1955年に一関青年会議所は全国で 78 番目の青年会議所として発足しました。70年前と言えば、電気洗濯機や白黒テレビ、冷蔵庫などの三種の神器が登場した時代です。そこから70年。今では誰もが携帯電話を持ち、スマートフォン1台で大抵のことができてしまう時代。世は大きな変化と進歩を遂げました。
青年会議所でも時代と共に運動や手法は日々変化し続けてきましたが、受け継がれる思いは変わりません。それは一重に先輩諸兄姉が英知と勇気と情熱を持って明るい豊かな社会をつくりあげようと志を持ち、仲間と共にこの地域に向き合ってきた賜物だと思います。決して平たんな道のりではなく、 先輩諸兄姉が築き上げた実績と、信頼が礎となりこの 70年という年月を迎えられたのだと実感しております。
一関青年会議所が 50周年を迎えた際に『50周年宣言』というものが作成され、その中に『遂げずばやまじの精神でこのまちをあかるい豊かなまちにするように、またやさしい心の満ち溢れるまちにするように』という一文があります。この思いを受け継ぎ、未来に繋げていくことが私たちの責務です。
また、現在までの一関青年会議所を支え、支援していただいた地域の方や、家族、仕事仲間など、この組織が多くの支えにより運営できていることを忘れてはなりません。先輩諸兄姉から受け継いだ未来への思いと、これまで支えてくださった方々への感謝の気持ちを原動力とし、今後も地域に求め続けられる組織としてあり続けます。そしてそのために、より良い地域の未来を目指すと共に、一関の素晴らしさを再認識するための活動を展開して参ります。
【結びに】
青年会議所は 40歳で卒業を迎えてしまう組織です。長年所属している私は幾度となく先輩方の卒業を見てきました。共に活動してきたメンバーの卒業は、不安と寂しさを感じるものです。しかし、ある先輩がこのような言葉を残していきました。「青年会議所は卒業がゴールではない。ここからが本当の地域を担うリーダーとしての力を発揮する場だ」と。私はその言葉に衝撃を受け、この組織を通して私自身が成長しなければいけないと強く感じました。40歳までという限られた時間は、成長の時です。だからこそ、この一年間を有効に使い、率先して行動を起こして参ります。
私のように、この地域に対し希望と魅力を感じる人、この地域に住み暮らしたいと思う人、この地域を愛する人が増えてほしいと切に願います。青年会議所の活動を通じて数ある地域課題の解決をしていくことが私たちの使命であり、今できる地域への恩返しと、未来に向けて歩む道です。私が出来る恩返しとして、一関がより良い地域になるよう運動をしていくことを誓い、メンバーと共に邁進して参ります。
子供たちに「帰っておいで」と言える一関を創造する
1.地域資源を活用した経済循環の推進
2.自立・分散型社会を実現する地域づくり
3.「二代目時の太鼓大巡行」を中心とし文化の質を高めることによる地域文化の発展・継承
4.新たな仲間づくりと、多様なメンバーが自分らしさを発揮できる持続可能な組織づくり